この質問への回答全1件
従業員からハラスメントの訴えがあった場合、一般的な対応としては大きく
①被害者からの事情聴取、②調査、③加害者に対する事情聴取・自宅待機、④処分等、⑤ハラスメントを防止するための体制構築に分けることが考えられます。
① 被害者からの事情聴取
ハラスメントの場合、不祥事が発覚する契機となるのは、被害者である従業員の申告による場合がほとんどであるため、まずは被害者から話を聞く必要があります。ただし、被害者は、ハラスメントによって精神的に深い傷を負っている場合があるため、積極的に質問することは避け、従業員本人の状況に合わせて安心して聞く姿勢が重要と考えます。また、話を聞き終わったら、被害者がどのようなことを望んで申告してきたのか意向を確認し、会社は、基本的に被害者の意向を尊重しますが、悪質なハラスメントであった場合には、会社として処分しないわけにはいかない為、被害者にも協力をお願いする等、話し合いを重ねながら進めていく必要があります。
② 調査
被害者の申告のみで、ハラスメントの事実を判断するには不十分なため、事実認定に必要な材料を集めます。一方、ハラスメントは、加害者と被害者間で行われるため、事実を直接的に示す証拠が少ないことが多いことから、間接的に被害者の申告内容を裏付けるような証拠(LINEやSNSなどのやりとり等)もあわせて収集しておく必要があります。また、加害者を除く関係者がいる場合には、その方からも話を聞き、客観的に事実を確認し、感情や関係者の推測などはできるだけ排除し、調査を行う必要があります。なお、事情聴取を行った関係者に対しては、ハラスメント申告の事実だけでなく、事情聴取を受けた事実自体も口外しないように注意しておく必要があります。
③ 加害者に対する事情聴取・自宅待機
ハラスメント事件において会社が加害者に接触するのは、調査の最後、つまり客観的な証拠の収集と関係者の事情聴取が終了した段階で行うことが原則となります。理由は、証拠隠滅の防止、被害者への接触の防止があげられます。
ハラスメントの加害者は、一般的には立場的な優越者であることが多く、周囲に対する影響力も大きいのが通常です。そのため、加害者から聞き取りを行った場合に、聞き取りをする関係者に、加害者が直接働きかけて有利な証言をするようにしたり、あるいは被害者に圧力をかけて申告を取り下げさせるようにする等、証拠隠減的な行為を行う危険を回避する必要があります。これらの危険を回避するために、ハラスメントの事実を加害者に知らせた後は、速やかに自宅待機を命じる等して、加害者と被害者の距離を離す措置をとる必要があります。
④ 処分等
事情聴取がすべて済んだら、懲戒処分の手続に入ります。なお、懲戒処分手続きの前には、加害者に弁解の機会を取ることを事情聴取までに終了しておく必要があります。一方、懲戒処分を行っても、また同じように加害者と被害者がと同じ部署、又は職場 で加害者の指揮命令関係にあるようでは、加害者と被害者双方にとってやりにくい状況になります。そこで、配置転換を検討する必要があります。また、最終的にどのような処分対応になったかについて、被害者へ報告を行う必要もあります。
⑤ ハラスメントを防止するための体制構築
被害者への対応とは別に、会社は事業主の名前をもって、ハラスメントを容認しないことを宣言するとともに、ハラスメントを禁止する規定を就業規則に設け、違反した場合に懲戒処分を行うことができるなどの就業規則における懲戒事由の追加及び修正を図る等を場合によっては行う必要があります。また、同時にハラスメントが禁止されていることを、従業員に周知、啓発を行います。いくら規定を設けても、従業員がこれを守 らなければ意味がないためです。
さらに、ハラスメント被害が生じた場合に、すぐに対応できるように、あらかじめ担当窓口を決めておくことも重要と考えます。独立のホットライン窓口があればベストですが、そうでなくても、人事部門内の担当者を決めておくといった対応も効果的です。また、特にセクハラの場合には、被害者に女性が多いことも考え、女性の相談担当者もいた方が、被害者としてもより相談しやすいと思います。
以上、従業員からハラスメント(セクハラ・パワハラ)の訴えがあった場合、上記の対応を迅速に行うことが一般的な対応となります。せっかく勇気を出してハラスメントについて相談したのに、会社の対応が悪く、被害者から信用失い、場合によっては会社に対して敵対的な行動をとられることがないように、初動から十分注意して取り組んで頂くのがよろしいかと思います。